【税理士解説】美容室の開業資金はいくら必要?東京で1,500万円〜の内訳と、公庫の創業融資を通す3つのポイント

こんにちは!中小企業の経営者様や独立を目指す皆様をサポートしている税理士の髙橋優介です。
今回は、独立開業を目指す美容師さんが最初にぶつかる壁、「美容室の開業資金」と「創業融資」について、勤務時代から通算して美容室を100社超見てきた税理士が解説します。
美容室の開業資金はいくら必要?全体像と資金の内訳
美容室の開業資金は、立地やサロンの規模によって大きく変動しますが、一般的な相場としては東京でセット面3~4面、15坪~20坪くらいの広さ(スケルトン)の場合、1,500万円〜2,500万円程度を見ておくのが現実的です。ご自身お一人で営業される小規模なプライベートサロンであっても、1,000万円〜1,500万円ほどは見積もっておくのが現実的です。
開業資金は、大きく分けて「設備資金」と「運転資金」の2つに分類され、だいたいの金額の目安は以下の通りになるかと思います。なお、開業場所や店舗の規模、スタッフの人数などによって必要となる開業資金は当然大きくズレてきますので、金額に注目するのではなく内訳の構造を理解することが重要です。
下表は右にスクロールできます。
【下記例示の想定条件】
立地:東京都(一等地以外)、広さ・家賃:15坪前後・月額30万円、セット面:3面~4面、内装:スケルトン
| 区分 | 内容 | 金額(税抜) |
| 設備資金 | 内装工事 | 800万円~1,100万円 |
| シャンプー台ほか備品一式 | 150万円~300万円 | |
| 保証金 | 150万円~300万円 | |
| 設備資金 小計 | 1,100万円~1,700万円 | |
| 運転資金 | カラー剤ほか消耗品一式 | 50万円~100万円 |
| 広告宣伝費 | 50万円~100万円 | |
| 諸経費 | 300万円~600万円 | |
| 運転資金 小計 | 400万円~800万円 | |
| 合計 | 1,500万円~2,500万円 | |
では、それぞれの内訳を詳しく見ていきましょう。
【設備資金】内装工事・シャンプー台等の相場
設備資金とは、美容室をオープンできる状態にするために初期投資としてかかるお金のことです。
美容室は店舗の内装工事やシャンプー台などの設備を整えるために、大きな費用がかかることが特徴です。特に設備の良し悪しが顧客体験に直結することから、各費用は高額になりやすい傾向にあります。
内装工事費(スケルトン vs 居抜き物件)
美容室開業において、最も大きなウエイトを占めるのが内装工事費です。
特に美容室はコンセプトやターゲット層に合わせた内装をデザインする必要があるため、オーダーメイドの造作を発注したりなど、節約しにくいコストでもあります。
何もないコンクリート打ちっぱなしの状態(スケルトン物件)から給排水設備や空調、内装をすべて作り込む場合、800万円〜1,100万円(坪単価50〜70万円程度)かかるのが一般的です。
一方、以前の美容室の設備が残っている「居抜き物件」を活用できれば、300万円〜800万円程度(坪単価20万円~50万円)に抑えられるケースも多く、初期費用を圧縮する有効な手段となります。
シャンプー台・セット椅子など主要設備の購入費用
美容室に欠かせないシャンプー台(2台)、スタイリングチェア(3~4脚)、促進機などの機材・備品費用は、約150万円〜300万円が目安です。お客様の満足度に直結する部分ですが、すべてをハイエンドモデルで揃えると予算を圧迫するため、メリハリをつけた投資が大切です。
店舗の保証金
店舗を借りるには毎月の家賃を支払うだけでなく、借りる際に初期費用として、保証金を支払う必要があります。事業用の物件は、居住用物件よりも保証金が高く設定されており、立地や大きさで金額には幅が出てきますが、おおむね月額賃料の6か月~10か月分が目安になります。東京都内で月額賃料30万円の物件であれば、礼金・保証金だけで150万円~300万円は準備しなければなりません。
【運転資金】開業初期を乗り切るための準備金
意外と見落としがちなのが、オープン後の「運転資金」です。
オープン当初は仕入や広告宣伝費が先行し、売上の計上が後になるため、先に仕入や経費の代金を支払えるように資金を準備しておく必要があります。人件費も同様です。売上がたっていなかったとしても、スタッフに給料は払わなければなりません。更にはクレジットやキャッシュレス決済が広く普及したことで、売上金の入金が施術日から1か月程度後になることも多いでしょう。
したがって、売上金の入金が安定的になるまでのキャッシュフローを維持するために、開業時には仕入や経費の支払代金としての「運転資金」を確保しておく必要がります。
初回薬剤(カラー・パーマ剤)と消耗品の在庫費用
オープン初日からお客様をお迎えするためには、カラー剤やパーマ剤、シャンプー、トリートメント、さらにはタオルやイヤーキャップといった消耗品類をあらかじめ買い揃えておく必要があります。これら初回在庫の仕入れには、数十万円から、規模によっては100万円近い費用がかかるでしょう。
広告宣伝費
ホットペッパービューティーなどの予約ポータルサイトは、開業当初は強力な集客窓口となり、有効な手段ですが、掲載費や手数料が継続的にかかります。
また最近ではインスタグラム等のSNSを活用した集客も感度の高い若者に対しては高い効果を発揮しており、SNSへの広告掲載や代行業者を利用したSNSマーケティングも重要な選択肢の一つとなっております。
これらの最低限の費用として、50万~100万円程度は確保しておきたいところです。
諸経費(目安3~6ヶ月分)
オープン直後から予約がパンパンになり、すぐに黒字化するケースは稀です。売上が少なくても、家賃、スタッフの給与(人件費)、水光熱費、通信料などの固定費は毎月確実にかかります。
開業当初の資金繰りショートを防ぐため、最低でも固定費の3〜6ヶ月分(約300万円〜600万円)は運転資金として確保しておくのが経営のセオリーです。
おすすめの資金調達は?創業融資と日本政策金融公庫
1,000万円以上の資金を全額自分の貯金でまかなえる方は多くありません。そこで活用したいのが「創業融資」です。
創業融資を受ける際に必要な自己資金の目安
融資を受ける際、金融機関が最も重視する要素のひとつが「自己資金」です。開業資金の全てについて融資を受けることは実務上はほとんどなく、開業資金全体の「3分の1〜4分の1(20〜30%程度)」の自己資金を用意したうえで融資を申し込むことが一般的です。
理由としては、金融機関にとって「自己資金」は創業者のその事業に対する熱意や自信、計画性、返済能力を測る重要な要素として考えられており、自己資金が少ないと創業者の準備不足として審査にマイナスの影響を与えることになります。
一時的に工面するだけでもいい?自己資金の本質と親族支援
よく勘違いされているのが、自己資金は融資までにかき集めれば良いというわけではありません。融資直前に親からの資金援助を受けて、それを自己資金として融資を申し込むケースもありますが、そのような経緯で準備した資金は自己資金として評価されない場合があります。
上記でも述べた通り、自己資金は経営者の熱意と計画性の表れです。急ごしらえで準備した資金よりも、何年かけても少しずつためたお金のほうが熱意も計画性があると銀行担当者は判断します。
このことは日本政策金融公庫が美容室向けに公開している「創業の手引+」の中でも言及されていますので、自己資金は自らの手で計画性をもって準備するようにしましょう。
日本政策金融公庫が税理士目線でおすすめな理由
美容室の開業融資において、私たち税理士が真っ先におすすめするのが「日本政策金融公庫(新規開業資金など)」です。
日本政策金融公庫(以下「公庫」という)をおすすめする理由は以下の通りです。
- 実績のない創業期でも融資を受けやすい
通常、実績のない時期に民間金融機関から融資を受けるのは非常に困難です。一方で、公庫は政府が100%出資する政策金融機関であり、民間金融機関では融資が難しい創業期の企業・個人事業主を支援することを主な使命としています。実績が無くとも事業計画の内容や将来性を考慮してもらえるので、融資実行率が他の銀行と比べて高いと言われています。 -
保証料・保証人が不要
原則として、経営者個人の連帯保証人や不動産などの担保なしで借り入れが可能です。特に保証料に関しては他の制度融資や金融機関から借りようとした場合には、信用保証協会に対して保証料率1%前後の保証料を取られるケースがあります(この保証料は金利とは別に発生する費用です。)。 -
融資のスピード
他の制度融資では融資実行までは2~3か月かかることも多いですが、公庫の場合は申し込みから1か月程度で融資が実行され、入金までのスピードが速いことが特徴です。資金の確保で足踏みすることなくスピーディに開業準備を進めることで、空き家賃や顧客離れを減らすことができます。
日本政策金融公庫の創業融資を通す3つのポイント
創業融資は、熱意で通るものではありません。公庫の担当者が見ているのは「この計画が現実に回るかどうか」の一点です。逆に言えば、見られる箇所は決まっています。審査をクリアし、希望額を引き出すための重要なポイントを3つご紹介します。
1. 美容師としての経験年数と過去の実績証明
公庫は「この人は事業を成功させられるスキルがあるか」を見ます。スタイリストとしての経験年数、店長やマネージャーとしてのマネジメント経験、指名客の数などは、大きな信用材料になります。
ただし、ただ経験年数を書くだけでは不十分です。 公庫が美容業向けに公開している「創業の手引+」には、よくある記載例と修正例が並べて示されています。
・○○美容専門学校卒業
・美容室△△に4年勤務
・ヘアサロン○○に8年勤務
・退職予定
これに対する指摘は、勤務先と勤務年数のみを記載するだけでは自分の強みを十分に伝えきれていない、というものです。
・美容室△△に4年勤務(若手美容師対象のコンクールで入賞)
・ヘアサロン○○に8年勤務 → 平成○年○月からは○○店の店長として従事(給与30万円)
・人材育成や店舗運営を任され、店長就任1年目で売上を10%増加させることができた
・退職予定(退職金80万円)
違いは、その経歴の中でどんな経験・スキルを得たか、何を成しえたかを客観的に検証できる形になっているかどうかです。「12年やってきました」は誰でも言えますが、「店長就任1年目で売上10%増」は数字で語れる実績です。公庫は、勤務時の役職・待遇・実績を具体的に記載することで自分の実力を客観的に伝えられる、と述べています。
こうした具体的な実績は勤務先を退職後に当時を思い出そうとすると曖昧になってしまいがちです。現在、勤務されている方で将来的に独立を考えている方は、ぜひ勤務時代の日々の個人売上や待遇などはメモして記録しておくことをお勧めします。
2. 実現可能性の高い売上・経費のシミュレーション
事業計画書(創業計画書)の数字は、根拠が命です。「客単価〇〇円 × 1日の客数〇〇人 × 営業日数」といった計算式を立てますが、開業直後からフル稼働(稼働率100%)するような甘い計画はNGです。
売上に関しては平均単価と回転数が肝になります。特に回転数に関しては創業当初から理想的な回転数を回すことは非常に稀です。楽観視せずに冷静にそしてシビアに見積もるようにしましょう。
また公庫に提出する資料では、以下のような「創業当初」と「軌道に乗った後」の2パターンを記載して提出することになります。
(下記の例示は、上記開業時の必要資金の例示とリンクした条件にしています。)
下表は右にスクロールできます。
【下記例示の想定条件】
立地:東京、家賃:30万円、平均単価:11,000円、営業日数:24日、セット面:4面、借入額:1,500万円
| 項目 | 創業当初 | 軌道に乗った後 |
| 売上高 | 210万円 | 335万円 |
| 売上原価(原価率10%) | 21万円 | 33万円 |
| 人件費(社会保険料含む) | 70万円 | 125万円 |
| 家賃(共益費込み) | 33万円 | 33万円 |
| 支払利息 | 4万円 | 4万円 |
| 減価償却費 | 10万円 | 10万円 |
| その他 | 30万円 | 35万円 |
| 利益 | 42万円 | 95万円 |
※金額は税抜です。
※人件費にオーナー分は含みません。利益がオーナーの取り分(生活費・納税資金・借入金の返済原資)となります。
※支払利息は借入1,500万円・年利3%として試算しています。実際の利率は融資制度や条件によって異なります。
【創業当初】
[構成]スタイリスト2名、オーナー1名
[売上]施術:3人(施術人員)×2.5人(回転数)×単価11,000円×24日=198万円
物販:売上の6% ⇒ 12万円
[人件費]30万円(スタイリスト1名あたり)×2名+10万(社保)=70万円
[支払利息]1,500万円(借入金)×3%÷12=約4万円
[その他]8万円(水光熱費)+12万円(広告費)+10万円(その他)
【軌道に乗った後】
[構成]スタイリスト3名、アシスタント1名、オーナー1名
[売上]施術:4人(施術人員)×3人(回転数)×単価11,000円×24日=316万円
物販:売上の6% ⇒ 19万円
[人件費]30万円(スタイリスト1名あたり)×3名+20万円(アシスタント1名あたり)+15万(社保)=125万円
[支払利息]1,500万円(借入金)×3%÷12=約4万円
[その他]8万円(水光熱費)+12万円(広告費)+15万円(その他)
ここで創業当初から高い回転数で、軌道が乗った後も同様の回転数で記載した場合、裏を返すと自ら伸びしろがないと宣言しているようなものです。
開業直後は集客が積み上がっていない、という当たり前の事実を計画に反映させてください。「売上高は低め、経費は多め」で試算し、それでも成り立つ収支計画であれば万全、というイメージです。もちろん業種や投資状況によっては収支計画上、赤字になってしまう場合もあると思いますが、大事なことは黒字化に向けた具体的な計画性です。
なお、上記は東京都を例に家賃も平均単価もあえて少し高めに設定していますが、反対に言うと家賃が坪単価2万円程度の場合は、平均単価が1万円を超えてこないと経営が難しいということです。このような数字の構造を理解せずに立地や席数、値決めをしてしまうと、収支の計画性を説明できなくなってしまいますので、必ず計画段階で綿密な収支計画のシミュレーションを行うようにしましょう。
ご自身の条件で試算できます
上記はあくまで一例です。家賃・平均単価・回転数・セット面数を入力すると、創業当初と軌道に乗った後の収支、返済後の手残り、家賃負担率までその場で計算できるツールをご用意しました。試算結果は印刷・PDF保存もできます。
3. 資金使途(何にいくら使うか)の明確化
「大体1,000万円くらい必要です」ではお金は借りられません。内装業者からの相見積もりや、美容ディーラーからの機材・商材の見積書をしっかりと揃え、「何に・いくら必要なのか」を客観的な書類で証明することが必須です。
創業計画書の「必要な資金と調達方法」欄には、見積先を記入する列があります。 記入例も、項目ごとに見積先の社名を書く形になっています。
店舗内外装工事(設備工事含む) ○○社 1,100万円
セット椅子 4台 ○○社 40万円
シャンプー台 2台 ○○社 40万円
什器、備品類 ○○社 120万円
保証金 ○○社 200万円
見積書のない数字は、担当者にとって存在しないものと同義です。相見積もりが求められる理由も明確で、公庫のチェックリストには「2社以上から見積書を取って、工事価格の妥当性や相場観をつかんでいますか」という項目があります。1社の見積書だけでは、その金額が適正かどうかを誰も判断できません。また相見積もりを怠って相場より高い金額で設備投資を行うことや曖昧な見積もりは経営者としての資質に疑念を抱かせる恐れがあります。お金の貸し手が、「この事業なら・この経営者になら投資したい。」と思わせるような行動や振る舞いを意識づけましょう。
この記事のまとめ
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東京・15坪前後・セット面3〜4面の美容室なら、開業資金は1,500万円〜2,500万円でそのうち内装工事が大きなウエイトを占めている
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自己資金は開業資金の20〜30%(約300〜700万円)を目標に、計画的に貯めることが重要
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創業融資は、無担保・無保証で創業者に優しい日本政策金融公庫(新規開業資金など)の活用がお勧め
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収支計画は家賃・平均単価・施術人員・セット面・回転数などの要素から組み上げ、無理のない計画を「創業当初」と「軌道に乗った後」に分けて書く
美容室の開業は人生を賭けた大きなチャレンジです。お金周りの不安をなくし、本業である美容のサービスに集中できるよう、しっかりとした資金計画を立てましょう。
なお、税務上の減価償却の取り扱いや、開業費の経費計上など、個別具体的な税務判断については、詳細は当事務所、またはお近くの税理士へご相談ください。
開業前に、一度だけ数字を見せてください
プリズム会計事務所は、創業支援を専門にしている税理士事務所です。
創業計画書は、書き方ひとつで通る額が変わります。設備の見積書と自己資金の状況さえあれば、いくらまで申し込むのが現実的か、事業計画の修正箇所など、その場でお伝えできます。
初回相談は無料です。顧問契約は月額20,000円から。開業後も、担当は代表税理士のまま変わりません。
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