年末調整の対象者とスケジュール|令和8年改正内容を税理士が解説【2026年版】

こんにちは!墨田区周辺を中心にスタートアップの企業を支援している税理士の髙橋優介です。
従業員を雇って最初の年末。11月に入ると、年末調整を何から手をつければいいか分からないという相談が増えます。
年末調整は年に一度しかやらない手続きですが、提出期限・納付期限も決まっているうえに、間違えると従業員の手取りに影響を与えてしまうという、スピードと正確性を求められる、とても重要な手続きです。加えて2026年(令和8年)の年末調整は、ここ数年で最も改正の影響が大きい年といえるため、昨年との違いについてもしっかりと理解して作業する必要があります。
そこでこの記事では、対象者の線引きとスケジュールを押さえたうえで、今年特に注意が必要な点を整理します。
この記事の執筆者
税理士 髙橋優介
大手・中堅税理士法人(デロイトトーマツ、アタックス)で約10年間の実務経験を経て独立。スタートアップから上場企業まで累計300社以上の支援実績を持つ。特に創業支援(50社超)と美容室経営支援(100社超)を得意とし、現場に寄り添う伴走型サポートに定評がある。また「基本情報技術者」の資格を持つITに強い税理士として、クラウド会計を活用したバックオフィス効率化から、組織再編・国際税務などの高度税務まで幅広く対応する。
※関与実績は勤務時代を含む。
2026年(令和8年)の年末調整の変更点
2026年(令和8年)の年末調整では、「年収の壁」対策や子育て世帯への支援策に関連して、各種控除や申告内容の確認範囲が変わります。加えて、基礎控除の引き上げや新たな特例の新設により、控除額の判定だけでなく、扶養対象者の再確認や生命保険料控除の適用判定も必要になります。そのため、年末調整事務を行う担当者は制度内容を把握し、従業員への周知を例年以上に徹底する必要があります。
変わったのは主にこの4つ
1.扶養親族・配偶者の所得要件が62万円以下に
控除対象となる扶養親族・配偶者等の合計所得金額要件が58万円以下から62万円以下へ引き上げられました。給与収入だけの方なら、年収136万円以下が目安です。
(スマホの場合)下表は右にスクロールできます。
| 控除 | 合計所得金額 | 給与だけの場合の収入金額 |
|---|---|---|
| 扶養控除 | 62万円以下 | 136万円以下 |
| 配偶者控除 | 62万円以下 | 136万円以下 |
| 配偶者特別控除 | 62万円超133万円以下 | 136万円超207万円以下 |
| 特定親族特別控除 | 62万円超123万円以下 | 136万円超197万円以下 |
2.給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円へ
給与所得控除については、65万円だった最低保障額が74万円に引き上げられます。
上記1.における「給与だけの場合の収入金額:136万円以下」は、給与収入が136万円の場合、給与所得控除74万円によって、136万円-74万円 = 62万円(合計所得金額)という計算から出ています。
もし手計算で年末調整の計算を行う場合には、国税庁が毎年公開している速算表もアップデートされているため、必ず、改正後の速算表を使ってください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2026/pdf/115.pdf
3.基礎控除の見直し
合計所得金額に応じて、基礎控除額が引き上げられました。下表のとおり合計所得金額に応じて控除額が変わりますので、こちらも必ず最新の控除額を適用するように注意してください。なお、合計所得金額2,350万円超の場合の基礎控除額に改正はありません。
また、上記2.の給与所得控除と下記の基礎控除の改正により、給与収入のみでほかに所得がない場合には、所得税が課税されない給与収入の上限(いわゆる「年収の壁」)は178万円となりました。
(スマホの場合)下表は右にスクロールできます。
| 所得者の合計所得金額 | 控除額 |
|---|---|
| 489万円以下 | 104万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 67万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 62万円 |
| 2,350万円超 2,400万円以下 | 48万円 |
| 2,400万円超 2,450万円以下 | 32万円 |
| 2,450万円超 2,500万円以下 | 16万円 |
4.生命保険料控除に上乗せ措置
子育て世帯向け生命保険料控除の特例として、23歳未満の扶養親族などがいる従業員について、一般生命保険料控除の上限額が引き上げられます。
具体的には令和8年分・令和9年分に限り、23歳未満の扶養親族がいる場合、新契約の一般生命保険料控除の上限が6万円に拡充されます(一般生命保険料控除、介護医療保険料控除及び個人年金保険料控除の合計適用限度額は、改正前と同様の12万円となります)。
令和8年分の保険料控除申告書には、この特例に対応した記載欄が追加されています。小さな子どものいる従業員に対しては記入漏れがないように注意喚起する必要があります。
(スマホの場合)下表は右にスクロールできます。
| 年間の新生命保険料 | 控除額 |
|---|---|
| 30,000円以下 | 新生命保険料の全額 |
| 30,000円超 60,000円以下 | 新生命保険料×1/2+15,000円 |
| 60,000円超 120,000円以下 | 新生命保険料×1/4+30,000円 |
| 120,000円超 | 一律60,000円 |
「去年と同じ」では危険、変更点は必ず従業員に周知を
去年の時点で「所得がオーバーしているので扶養に入りません」と判定した親族が、今年は対象に入ってくる可能性があります。特に学生のアルバイトや、パートの配偶者がこれに当たります。必ず従業員には今回の改正点の内容を周知し、配偶者・扶養・特定親族などに関する情報が正しく会社に提出されるように事前準備をしておきましょう。
年末調整の対象になる人・ならない人
対象になる人
年末調整は、原則として「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出しており年末調整の時期に在籍している役員・従業員全員に対して行います。
- 休職中・退職予定でも、在籍していて扶養控除等申告書を提出していれば対象
- 医療費控除や住宅ローン控除1年目で自分で確定申告をする予定の人も対象(「確定申告するかどうか」は判定基準ではありません)
- アルバイト・パートも、扶養控除等申告書を提出していれば対象
対象にならない人
以下に該当する場合には例外的に年末調整の対象外となります。
- 年間の給与総額が2,000万円を超える人
- 年の途中ですでに退職している人
創業期の会社からよくある質問
業務委託の取り扱い
年末調整は「給与」に関する手続きです。業務委託契約で支払っているなら、それは給与ではなく外注費なので、年末調整も源泉徴収も行いません(デザイン料や原稿料など、源泉徴収が必要な報酬は別論点です)。年末調整は、あくまでも給与所得について会社が代わりに税額の申告・納税をする手続きであり、外注費の場合は業務委託先(個人事業主)本人が自身で税額の申告・納税を行う必要があります。
美容室やサロンのように、雇用と業務委託が同じ店内に混在している業種では、ここが毎年つまずきます。書類を配る前に、まず全員のリストを「雇用」と「業務委託」に分けてください。
なお、名目上は業務委託であっても勤務時間や方法を指示していれば雇用と判定されるリスクがあります。これは年末調整より前のもっと大きな論点です。
https://prism-tax.jp/salon-subcontract-vs-employment/
副業・掛け持ちの扱い
年末調整は「主たる給与」だけが対象です。扶養控除等申告書は1か所にしか出せないため、従たる(副業の)勤務先では年末調整は行わず、主たる給与の勤務先で主たる給与について年末調整を行うことになります。
なお、年末調整だけでは主たる給与の税金計算しか行われないため、従業員本人は原則的には副業収入もあわせた確定申告が必要になる点に留意が必要です。
スケジュール|11月上旬から翌年1月末まで
翌年1月の給与で還付・徴収を反映する場合、全体で約3か月かかります。
一般的なスケジュールとしては以下のようになると思います。
(スマホの場合)下表は右にスクロールできます。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 10月下旬 | 従業員へ書類を配布。提出期限を明記する |
| 11月中旬 | 一次提出期限。原則ここで回収しきる |
| 11月下旬 | 未提出者へのリマインド、不備の差戻し |
| 11月末 | 差戻し分の回収完了。記入漏れ・証明書の提出漏れを最終チェック |
| 12月中 | 12月の給与・賞与を集計し、年調年税額を計算。過不足額を確定。源泉徴収票を作成 |
| 翌年1月 | 給与へ還付・徴収を反映。源泉徴収票を従業員へ交付 |
| 翌年1月10日 | 12月支給分の源泉所得税を納付(納期の特例を受けている場合、7〜12月分は1月20日) |
| 翌年1月31日 | 税務署へ源泉徴収票・法定調書合計表、市区町村へ給与支払報告書を提出 |
従業員からよくある質問
社内FAQを先に配っておくと、担当者への問い合わせがそのまま減ります。
Q.控除証明書をなくしました
再発行できます。生命保険料・地震保険料は各保険会社、国民年金は日本年金機構、前職の源泉徴収票は前の勤務先へお問い合わせください。手元に届くまで数週間かかることがあるため、早めに再発行を依頼してください。
Q.扶養とはどういう意味ですか?
一定の所得以下の配偶者や子ども、親などのうち、「生計を一にする(=同じ財布で生活する)」家族のことです。
必ずしも同居している必要はなく、単身赴任中の会社員や下宿中の学生などでも、休日に帰省したり、定期的に生活費や学費を仕送りしたりしていれば「生計を一にしている」と判定されます。
Q.妻を配偶者控除に入れられますか?
生計を一にしていて、配偶者の合計所得金額が62万円以下(給与収入のみなら136万円以下)であることなどが要件です。なお、136万円を超えても207万円以下までは配偶者特別控除の対象になる可能性があります。
※控除を受ける従業員本人の合計所得金額が1,000万円超の場合には、配偶者控除・配偶者特別控除のいずれも受けられません。
Q.自分で確定申告するので、書類は出さなくていいですか?
提出が必要です。年末調整の対象外となるのは、年間の給与総額が2,000万円を超えるなど一定の要件を満たす場合に限られます。ご自身で確定申告を行う予定であっても、会社への書類提出は必要となります。
Q.年末調整の計算が終わった後、年末に子どもが生まれました。やり直しはできますか?
扶養の判定は「12月31日時点」の状況で行います。年末調整の計算後に変更があった場合も、翌年1月31日までなら会社で年末調整のやり直しが可能です。期限に間に合わなければ、ご自身の確定申告で精算していただくことになります。
なお、16歳未満の子は扶養控除の対象にはなりませんが、給与収入850万円超の場合の「所得金額調整控除」や住民税の非課税限度額の判定などに影響しますので、必ず申告してください。
紙でやるか、クラウドにするか
結論から言うと、これから起業する方はクラウドで行うことをおすすめしています。既に紙ベースで行っている方は、従業員が5人を超えたらクラウドへの移行を検討すべきと考えています。
紙の年末調整で一番大変なのは、計算そのものではなく、提出資料の周知や配布と資料・情報の回収、といった事前準備です。また従業員から手書きの申告書の提出を受ける場合、「字が読めない」「申告額ではなく証明額が書いてある」といった差戻しが発生する可能性があります。
これをクラウドに切り替えた場合、従業員はアンケート形式の質問に答えるだけになり、この差し戻しが大きく減ります。
マネーフォワードの試算(従業員100名のモデルケース)によると、紙で行う場合の217.8時間に対し、クラウド導入後は80.0時間。作業時間で約63.3%の削減とされています。時間給3,000円で換算すると、653,400円が240,000円になる計算です(同社「年末調整のWeb化、業務効率化だけじゃない3つのメリット」より)。
従業員10名規模ならこの1/10程度の規模感になりますが、削減率そのものは人数に比例しません。税法改正のキャッチアップや申告フォーマットの確認は、人数に関係なく発生する工数です。たとえ一人社長の会社であっても忙しい社長がこれらの情報をキャッチアップすることに時間を費やすことは非効率です。クラウドに移行すれば、こうした情報が正しく反映されたシステムの案内に従ってアンケートに答えるだけで年末調整が完結します。これは工数削減のみならず、年末調整のミスも減らすことができるため、かなり効果的です。
ぜひ、一度年末調整のクラウド化を検討してみてください。
まとめ
- 2026年の年末調整は、①扶養・配偶者の所得要件、②給与所得控除の最低保障額、③基礎控除、④生命保険料控除の上乗せ措置などの見直しが行われている
- 年末調整の対象者は原則として年末在籍者全員
- 資料回収のスケジュールは差戻し・修正期間も織り込んだ設定をする
- 年末調整をクラウド化することで年末調整担当者、従業員の双方の時短につながる
プリズム会計事務所は、創業期の会社の支援に強い税理士事務所です。
創業支援実績50社超(※勤務時代からの通算)の代表税理士が税務顧問だけでなく、年末調整のクラウド化や記帳業務の効率化など、社長のバックオフィス業務の負担を減らすための解決策を提案いたします。
年末調整業務や記帳業務にお困りの方はぜひ一度弊所にご相談ください。初回相談は無料です。
※本記事は2026年10月時点の情報に基づいています。制度は改正されることがあるため、申告前に国税庁のWebサイトで最新情報をご確認ください。個別のご判断については当事務所までご相談ください。
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参考URL
- 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2026kiso/index.htm
- 国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2026kaisei.pdf
- 国税庁「No.2665 年末調整の対象となる人」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2665.htm
- 国税庁「No.1180 扶養控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm - 国税庁「No.1191 配偶者控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm
- 国税庁「No.1195 配偶者特別控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
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