賃上げを「コスト」で終わらせない!節税メリットを最大化する賃上げ促進税制のポイント

皆さま、こんにちは。プリズム会計事務所の髙橋優介です。 最近、多くの経営者から「人手を確保するために給与を上げたいけれど、社会保険料も高いし、会社のキャッシュが心配で……」という切実な声を聞きます。
物価高や採用難が続く中、賃上げは避けて通れない課題ですよね。でも、賃上げは単なる「コスト」ではありません。国の「賃上げ促進税制」という制度を賢く使えば、法人税を直接減らすことができ、実質的な負担をぐっと抑えることが可能です。
今回は、令和9年3月31日までの間に開始する事業年度の青色申告書を提出する中小企業者等(※1)に該当する法人に絞って、その仕組みと「これからの動向」を分かりやすくお伝えします。
※1 中小企業者等とは資本金の額が1億円以下の一定の法人。
賃上げ促進税制とは?経営者が知っておきたい「節税」の仕組み
この制度をざっくり言うと、「前期よりも従業員の給与を増やした場合、その増えた金額の一定割合を、法人税から控除してあげますよ」というものです。
税金計算の基礎となる所得をを減らすのではなく、計算された税金そのものを直接減らす(税額控除)ため、節税効果が非常に高いのが特徴です。
給与を増やした分の最大45%(※2)が法人税から控除される!
中小企業の場合、前年度より給与総額を1.5%以上増やせば、増加額の15%が税額控除されます。さらに、2.5%以上の賃上げなら控除率は30%に跳ね上がります。
そのほか、教育訓練費(研修代など)の増加やくるみん、えるぼし認定等の取得により税額控除率の更なる上乗せも狙うことができます。
※2 上乗せ要件を満たした場合の最大値。
【令和8年度改正】大企業は廃止!?でも中小企業は「継続」
ここで一つ、重要なニュースがあります。令和8年度の税制改正において、賃上げ促進税制のあり方が大きく変わります。
実は、大企業や中堅企業向けの賃上げ促進税制は、「廃止」される方向で進んでいます。「大手はもう自力で賃上げできるはず」という判断ですね。
しかし、安心してください。中小企業向けの賃上げ促進税制は、引き続き維持される予定です。 国としても、「人手不足の中で必死に賃上げを頑張る中小企業は、しっかり支え続けよう」というスタンスなんです。
ただし、一点だけ注意があります。これまであった「教育訓練費(研修代など)を増やした際の上乗せ措置」については、中小企業向けでも廃止される予定です。今のうちに使える制度はしっかり使い切っておきましょう。
うちの会社は使える?適用を受けるための3つのステップ
「うちはそんなに難しい計算できないよ」と思われるかもしれませんが、ステップは意外とシンプルです。
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対象となる従業員の範囲を確認する
国内の事業所で働く従業員(パート・アルバイト含む)が対象です。役員やその親族などは含まれないので注意してください。 -
前期より「何%」増えたか計算する
会社全体の給与総額(雇用者給与等支給額)が、前期分の給与総額(比較雇用者給与等支給額)と比較してどれくらい増えたかを見ます。一人ひとりの給与だけでなく、「人数が増えて総額が上がった」場合も対象になります。 - 申告書に必要書類を添付する
確定申告の際に、必要書類を添付して提出すれば完了です。
よくある集計ミス
ここで、給与総額(雇用者給与等支給額・比較雇用者給与等支給額)の集計でよくあるミスについて紹介します。
- オーナーの家族に対する給与を給与総額に含めてしまった
オーナー企業の場合、ご子息・ご令嬢が従業員として入社しているケースがよくあります。オーナーの親族に対する給与は、たとえその親族がその会社の役員でなかったとしても、給与総額からは除かなければいけません。社長の家族・親族が会社に所属している場合には注意しましょう。 - 給与総額から出向負担金として受け入れた金額を除くことを失念してしまった
例えばグループ会社へ出向している社員がいる場合、その出向者に対する給与は出向元法人から支払い、出向先法人から出向元法人が給与負担金を受け取るといった取引が生じます。この場合、出向元法人の給与総額の集計上、その出向者の給与が含まることになるかと思いますが、出向先法人から受け取った給与負担金はその給与総額から除かなければいけません。出向社員がいる場合には注意しましょう。 - 設立1期目だが、賃上げ促進税制を適用しようとしてしまった
設立1期目の場合、前事業年度がないことから、少しでも給与の支払いがあれば適用することができそうに思えます。しかしながら、新規設立で全事業年度がない場合は本税制は適用することができませんので、ご注意ください。
赤字の場合は税額控除ができない、でも「繰越控除」がある!
せっかく給与を上げても、「法人税額の20%」が控除の上限となります。赤字の年度はそもそも引く税金がないため、その年はメリットを受けられません。
ただし、中小企業者等には「5年間の繰越控除」という措置があります。「今年は赤字だったけど、来年黒字になったら今年の分の控除を使おう!」ということが可能です。諦めずにしっかり集計しておきましょう!
まとめ
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賃上げ促進税制は、増やした給与の最大45%を税金から控除できる制度。
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令和8年以降、大企業向け等は廃止されるが、中小企業向けは継続される。
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赤字でも「5年間の繰越」ができるため、毎期検討すべき。
賃上げは経営にとって大きな決断ですが、国のサポートを最大限に活用して、従業員の満足度と会社の成長を両立させていきましょう。 「自社でいくら節税できるか計算してほしい!」という場合は、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。
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※個別の具体的な税務判断については、当事務所またはお近くの税理士へご相談ください。
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