役員報酬、いくらが正解?節税と手取りの最大化を両立する「最適値」の見極め方

経営者にとって、自分自身の給料である「役員報酬」をいくらに設定するかは、最も頭を悩ませる問題の一つですよね。
「節税したいけど、結局いくらにすれば一番手残りが増えるの?」「会社の資金繰りも心配……」
そんな疑問に答えるべく、今回は役員報酬を決める際の「正解」の導き方について、税理士の視点で分かりやすく解説します。
役員報酬を決める上で重要な3つのポイント
役員報酬は、単に「個人の給料」というだけでなく、会社の税金や社会保険にまで影響します。まずは以下の3つのポイントを意識しましょう。
1. 会社の利益(法人税)と個人の所得(所得税)の税率差
会社に利益を残せば法人税がかかり、役員報酬を増やせば個人の所得税が増えます。所得税は累進課税のため、報酬が高くなるほど税率(最大45%)が上がります。 一方で、法人税の実効税率は中小企業なら約30%(所得金額によってはさらに低い)です。この「税率差」を利用して、会社と個人の納税額の合計が最小になるポイントを探るのが基本となります。
2. 見落としがちな「社会保険料」のインパクト
実は税金以上に負担が重いのが社会保険料です。会社と個人で折半して負担しますが、合計すると報酬の約30%にも達します。役員報酬を上げすぎると、税金以上に社会保険料の増加が手残りを圧迫することが多いため、事前のシミュレーションが欠かせません。
3. キャッシュの最大化を狙ったバランスの見極める
役員報酬を高くした場合と低く場合では、通常、税金や費用は以下のように変化します。
| 項目 | 役員報酬を高くする | 役員報酬を低くする |
| 会社の利益 | 減少 | 増加 |
| 法人税 | 減少 | 増加 |
| 個人の所得 | 増加 | 減少 |
| 所得税 | 増加 | 減少 |
| 社会保険料 | 増加 | 減少 |
役員報酬を高くすれば法人税は減り、所得税と社会保険料は増える、反対に役員報酬を低くすると法人税は増え、所得税と社会保険料が減る。
この基本的な影響を理解したうえで、会社と個人の手元に残るお金が最大化されるポイントを見つけましょう。
目先の節税だけではダメ。中長期の視点の重要性
自身の生活費と会社のキャッシュフローに無理はないか?
節税だけうまくいったとしても、自身の生活が苦しかったり、会社の経営がうまくいかなくなってしまったら、元も子もありませんよね。
例えば、会社の利益は出ているが、今現在の役員報酬では生活費がギリギリな状態だ、という場合には役員報酬を上げるという選択をとることは必然でしょう。もし将来の設備投資や融資の審査を考えているなら、あえて報酬を少し低めに設定して法人の利益を増やし、自己資本を厚くしておくという選択もあります。
このように自身の生活費や会社のキャッシュフロー、今後の設備投資計画など、これらを総合的に考慮したうえで「キャッシュの最大化」を狙いましょう。
役員退職金を見据えた設計
自身の会社も成熟してきて出口戦略を考えるようになったら、「役員退職金」についてもセットで検討しましょう。
退職金には通常の報酬(給与)にはない非常に有利な税制上の優遇措置があるので、給与よりも退職金として報酬を受け取ったほうが税負担が軽くなる傾向にあります。さらに役員退職金の支給は事業承継の場面でも大いに活用することができるため、節税効果が非常に高いイベントといえます。
しかし、この役員退職金はいくらでも支払って良いわけではなく「適正額」というものがあります。この適正額の算定には一般的に「最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率」という計算式が用いられます。
毎月の役員報酬が計算要素になっていますので、毎月の報酬をいくらにするかだけでなく、将来いくら退職金を受け取るかまで見据えて設計することで、生涯の手残りを最大化することができます。
役員報酬に関する税務上の注意事項
役員報酬は利益調整に活用される恐れがあることから、税務上の厳しいルールがあります。ここを間違えると、経費として認められない(損金不算入)リスクがあるため注意が必要です。
定期同額給与のルールを厳守する
原則として、役員報酬は年に1回しか変更が認められていません。「事業年度開始から3ヶ月以内」に役員報酬を決定し、その後1年間は「毎月同じ金額」を支払う必要があります。期中の利益が出たからといって、途中で増額したり減らしたりすると、原則として経費として認められません。
賞与を払いたい場合
役員に対して賞与を支払いたい場合には、「事前確定届出給与」の届出を一定の期限までに税務署に提出する必要があります。
その名の通り事前の届出がなかったり、届出内容と異なる金額で支給してしまったりすると、経費として認められない(損金不算入)ため、注意が必要です。
まとめ
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法人税・所得税・社会保険料の「3つの合計負担」が最小になる点を探る。
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「節税」だけでなく経営判断、出口戦略も考慮する。
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定期同額給与のルールを守り、期中の変更は原則行わない。
役員報酬の最適解は会社の利益状況、設備投資計画、そして経営者自身のライフプランによって毎年変わり、非常に複雑です。個別具体的な判断については、ぜひ当事務所、またはお近くの税理士へご相談ください。 貴社にとってのベストな金額を、一緒にシミュレーションしていきましょう!
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