「健康診断」で会社を強くする!ローカルベンチマーク活用のメリットと実践ステップ

経営者の方から「うちの会社、銀行からどう見られているんだろう?」というご相談をよくいただきます。
そんな時に私が最初におすすめしているのが、経済産業省が提唱する「ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)シート」です。このツールは、自社を客観的に見ることが苦手な方や、財務分析をしたいけどやり方が分からない方であっても非常に使いやすく、しかも無料のツールなので、ぜひ積極的に活用してほしいと思います。
今回は、このロカベンシートを使って自社を客観的に見つめ直し、経営改善やスムーズな資金調達に繋げる方法を分かりやすく解説します。
そもそも「ローカルベンチマーク」とは?
ローカルベンチマークとは、一言で言えば「企業の健康診断ツール」です。
通常の決算書は「過去の数字」の集計ですが、ロカベンは「数字(財務情報)」と「数字に表れない強み(非財務情報)」の両面から会社を評価し、自社の強みを正しく把握することで、その強みを会社の経営に活かすことを目的としています。
これらの評価は経済産業省が提供するツール(ロカベンシート)を使って行うことができます。
経済産業省|ロカベンシート
ロカベンシートは主に3つのシートで構成されており、以下を整理・分析することで、自社の評価を点数化したり、同業他社と比較・分析したりすることができます。
・「業務フロー・商流」(非財務情報):製品・商品・サービスを提供する流れを整理する
・「4つの視点」(非財務情報):経営全体を「経営者」「事業」「関係者」「内部管理体制」の4つの視点から整理する
・「財務分析」(財務情報):決算書情報を入力して財務状況を分析する
なぜ今、ローカルベンチマークが必要なのか?
財務データだけでは見えない「企業の底力」を可視化する
決算書の数字が少し悪くても、実は「素晴らしい技術がある」「地域で圧倒的な信頼を得ている」という会社はたくさんあります。ロカベンは、そうした「数字の裏側にある価値」を言語化してくれるため、自社の本当の強みに気づくきっかけになります。この強みこそが「企業の底力」であり、これらを正しく把握することが、経営上の優位性を獲得するため戦略の出発点となります。
なお、「数字の裏側にある価値」、つまり「目には見えない資産」は知的資産と定義され、この知的資産を活かして業績向上に結び付ける手法を「知的資産経営」といいます。
金融機関との「共通言語」としての役割
銀行の担当者も、実は「数字以外の強み」を知りたがっています。ロカベンの金融機関の認知度はほぼ100%と言われているため、このロカベンという共通のフォーマットを使うことで、説明の漏れがなくなり、銀行側も「この経営者は自社を客観的に分析できている」と安心感を抱いてくれるようになります。
ロカベンシート① 経営の「こだわり」を整理する:業務フロー・商流の分析(非財務)
ロカベンにおいて、財務数値と同じくらい重要なのが「業務フロー・商流」の整理です。
1. 業務フローの可視化(付加価値はどこで生まれるか)
「受注→仕入→製造→販売→アフターフォロー」といった一連の流れを書き出します。 ここで大切なのは、「どの工程で自社独自のこだわり(付加価値)を発揮しているか」を見つけることです。例えば「他社より納期が早いのは、この工程を工夫しているからだ」といった強みが明確になれば、それは強力な営業トークや経営戦略の柱になります。
2. 商流の整理(どこから仕入れ、誰に売るか)
仕入先から自社、そして顧客へと流れる「商流」を図式化します。「特定の仕入先に依存しすぎていないか?」、「顧客層に偏りはないか?」といったリスクの把握だけでなく、「この顧客層に支持されているから、今の利益率が保てている」という自社の立ち位置(ポジショニング)を再確認できます。
上記を整理しながら、他社との差別化ポイントを意識することで、自社の強みが明らかになります。
ロカベンシート② 数字に表れない強みを見つける:4つの視点(非財務)
ロカベンの最大の特徴は、以下の4つの視点で自社を棚卸しすることです。
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経営者: 経営理念や後継者の有無。
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事業: 他社にはない強み、市場のシェア。
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関係者: 顧客との関係性、従業員の定着率。
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内部管理体制: 経営計画の有無、従業員との情報共有、人材育成の仕組み。
これらを整理したうえで「業務フロー・商流」との関係性を明らかにすることで、自社の強みの源泉や課題が浮き彫りになります。
ロカベンシート③ 自社と他社の違いを数値化する:財務分析
ロカベンでは、以下の6つの指標を分析します。
※これらの数値は、決算書の数字を入力するだけでロカベンシート上で自動計算されます
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売上高増加率(成長性)
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営業利益率(収益性)
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労働生産性(効率性)
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EBITDA有利子負債倍率(返済能力)
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自己資本比率(安全性)
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キャッシュ・フローサイクル(資金繰りの効率性)
ロカベンシートでは上記6つの指標を決算書情報からレーダーチャートで可視化することができ、なおかつ同規模の他社との立ち位置の比較が可能となります。
ロカベンを活用して「融資」と「経営」を有利に進める方法
金融機関への相談や融資の際の「根拠資料」として活用
銀行へ融資の相談に行く際、決算書だけを出すのと、「ロカベンで分析した自社の強みと課題」を添えて説明するのとでは、担当者の受ける印象が180度変わります。 「課題はここですが、この強みを活かしてこう改善します」という根拠のある説明ができるようになり、信頼関係の構築(リレーションシップ・バンキング)に大きく寄与します。
従業員とビジョンを共有するためのコミュニケーションツールに
ロカベンで整理した内容は、社内での共有にも有効です。自社の強みを従業員と共有することで、組織の一体感が高まり、全員が同じ方向を向いて経営改善に取り組めるようになります。
【実践事例】ロカベンで「自社の真の強み」を再発見
ある雑貨企画販売会社(従業員9名)では、ロカベンを通じてビジネスモデルの劇的な転換に成功しました。
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直面していた課題
販促用ノベルティの価格競争が激化し、円安や原材料費の高騰も重なって、利益率の低下に悩んでいました。 -
ロカベンでの気づき
経営者とデザイナーが業務フローを可視化した結果、単なる製造受託ではなく「担当デザイナーが企画から納品まで一貫して対応する、スピード感のある提案力」こそが、他社にない独自の強みであると再認識しました。 -
実行したアクション
この強みを活かし、価格競争の激しい「おまけグッズ」分野から、専門知識を組み合わせた「高付加価値な自社ブランド商品(ヘルスケア分野など)」の開発へと舵を切りました。 -
得られた成果
新市場への参入により、自社で価格決定権を持つビジネスモデルを構築。売上と利益率の両面で改善を実現し、金融機関への説得力ある説明にも繋がりました。
「当たり前」だと思っていた自社のプロセスを図にするだけで、どの強みを伸ばし、どの市場へ攻めるべきかという戦略が明確になります。
まとめ
ローカルベンチマークは、決して難しいものではありません。
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現在の立ち位置を客観的な数値で知る
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自社独自の強みを再発見する
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それを社外(銀行など)や社内へ正しく伝える
このサイクルを回すことで、経営は確実に強くなります。 「どこから手をつければいいか分からない」という方は、まずは財務指標の入力から始めてみましょう。
※個別具体的な税務判断や、自社へのロカベン導入の詳細については、当事務所またはお近くの税理士へご相談ください。
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